アメリカ合衆国の財務省が発行元である米国債は、日本の国債の金利と比べて高いため、多くのリターンが見込める金融商品として人気があります。
米国債とは、債券を購入することで発行元であるアメリカ合衆国の財務省にお金を貸し付け、満期時に券面額という債券に記載されている金額が払い戻される有価証券です。
中には、半年毎に利息が受け取れる米国債もあります。
米国債は人気がある金融商品ですが、元本や利息が保証されていないリスク商品でもあります。
この記事では、基本情報をもとに米国債を保有するリスクや相場の値動きについて詳しく解説しています。
米国債に興味を持っている人は、是非参考にしてください。
この記事でわかること
- 米国債はリスクはあるものの高いリターンが臨める金融商品
- 米国債の代表的なリスクは4つある
- 最大のリスクである為替リスクはドルの保有で軽減できる
- 価格変動リスクは満期までの保有で軽減できる
- 米国債において信用リスクや流動性リスクは低い
まずは、米国債の特徴について詳しくみていきます。
米国債は世界的にも人気がある金融商品
米国債は年2回利息が支払われる利付債と予め利息分を割り引いて購入できるゼロクーポン債があり、それぞれの特徴と向いている人は以下のとおりです。
種類 | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
利付債 | 1年に2回利息が支払われる | 半年ごとの利息受け取りを希望する人 |
ゼロクーポン債 | ・ストリップス債とも言われる ・利息の支払いがない分、券面額から割引されて販売される。 | 少ない投資額でお金を増やしたい人 |
それぞれの特徴を把握し、自分の投資スタイルに合わせて購入しましょう。
一方で債券には、新たに発行される新発債と既に発行されている既発債があり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
新発債と既発債の違い
債券の種類 | 購入先 | 特徴 |
---|---|---|
新発債 | 発行元 | 利率や購入額が確定しているため、利回りが明確になっている。 |
既発債 | 流通市場 | 景気や社会情勢によって購入額が変動するため、購入時まで利回りは不確定。 |
証券会社等で通常購入できる米国債は既発債ですが、いずれも満期前に流通市場に売却できます。
米国債を保有するメリット
米国債を保有するメリットは、大きく3つあります。
- 高い利率
- 信用力
- 流動性
利率が高い金融商品は他にも沢山ありますが、そのほとんどが元本割れのリスクがかなり高いものとなっています。
つまりハイリスク、ハイリターンの金融商品が多い中で、米国債はリスクは抑えられていながらも高いリターンが臨める魅力的な金融商品です。
しかし、ノーリスクではないため、事前にリスクとリターンを確認してから購入しましょう。
利回りとは投資効率を測る指標
リスクとリターンの程度を測り、購入すべきか検討する際は、利回りを参考にしましょう。
利回りとは、米国債の購入額に対する1年間で得られた収益の割合のことであり、利率だけでなく購入額と売却額または券面額の差も反映されます。
例えば、以下の条件で米国債を満期まで保有した場合の利回りは、年3.45%となります。
- 購入額96ドル
- 券面額100ドル
- 満期まで3年9カ月
- 利率は年2.25%
{2.25%+(100-96)÷3.75}÷96×100≒3.45
一方で、この米国債を満期前に売却する際の損益分岐点となる売却額Aは、以下の方法で計算できます。
{2.25%+(A-96)÷3.75}÷96×100=0
A=87.5625
従って、この米国債の損益分岐点となる売却額は、87.5625ドルとなります。
上記のケースでは考慮していませんが、実際に検討する際は、為替相場や証券会社に支払う手数料も考慮しなければなりません。
証券会社等では、様々な条件の既発債が売りに出されているため、事前に利回りを比較してから購入しましょう。
米国債を保有する上で代表的なリスクは4つ
米国債を保有するリスクは大きく4つあり、その概要は以下のとおりです。
リスク名称 | リスクの概要 |
---|---|
為替リスク | 為替相場の変動により、投資の損益が不確定であること。米国債の場合、購入時よりも円高に進んでいると損失が発生する可能性が高い。 |
価格変動リスク | 債券が購入した時の価格から変動しているため、投資による損益が不確定であること。金利動向の影響を大きく受ける。 |
信用リスク | 債券の利子や元本の支払いが滞るリスク。S&Pの格付けなどが参考指標となる。政治、経済、社会情勢の変化も故意慮されるため、先進国よりも新興国のほうがリスクが高い。 |
流動性リスク | 満期前の債券の売却の際、すぐに買い手が見つからないリスク。 |
上記の中で、米国債保有において為替リスクと価格変動リスクはかなり大きいため、事前にリスクとリターンを確認したうえで購入しましょう。
一般的には上記のリスクの他に途中償還リスクなどがありますが、米国債ではリスクの度合いが非常に低いため、気にする必要はありません。
為替リスクは米国債を保有する上で最大のリスク
米国債は、購入時や利息を受け取る際など全てのタイミングで、ドルで取引されます。
従って、米国債を保有している間は為替相場の影響を受けるため、為替リスクは常について回る最大のリスクです。
この場合のリスクとは、損失が出る可能性ではなく、変動により損益が不確定となることを指します。
為替相場とは異なる通貨の交換比率のことであり、日本円で購入できる他の通貨が相対的に多い場合を円高、相対的に少ない場合を円安といいます。
例えば、100万円でドルを購入する場合、為替相場によって購入できるドルは変動します。
100万円で購入できるドルの違い
為替相場 | 1ドル=130円との比較 | 購入できるドル |
---|---|---|
1ドル=110円 | 円高ドル安 | 100万円÷110円≒9,090ドル |
1ドル=130円 | – | 100万円÷130円≒7,692ドル |
1ドル=150円 | 円安ドル高 | 100万円÷150円≒6,666ドル |
上記のとおり、円高ドル安の場合は多くのドルを購入できますが、円安ドル高の場合は購入できるドルが少なくなります。
米国債の満期や売却時に円安であればプラス、円高であればマイナス
例えば、1ドル=130円の場合、100万円で約7,692ドルの米国債が購入できます。
その米国債の満期や売却時に受け取れる日本円も、為替相場の変動によって以下のとおり大きく変わります。
7,692ドルの米国債で受け取れる日本円の為替相場による違い
満期や売却時の為替相場 | 購入時1ドル=130円との比較 | 受け取れる日本円 | 購入額100万円に対する損益 |
---|---|---|---|
1ドル=110円 | 円高ドル安 | 7,692ドル×110円=846,120円 | 153,880円の損失 |
1ドル=130円 | – | 7,692ドル×130円≒1,000,000円 | 損益はなし |
1ドル=150円 | 円安ドル高 | 7,692ドル×150円=1,153,800円 | 153,800円の利益 |
※米国債保有期間内の受取利息は考慮しないものとする
上記のとおり、購入時よりも為替相場が円安ドル高になった場合は利益がでますが、円高ドル安になった場合は損失が発生します。
さらに、上記の例で考慮していない米国債保有期間内の受取利息も為替相場の影響を受けるため、購入時よりも円安ドル高であるほうが日本円での受取額が増えます。
しかし為替相場は、以下の要因などで刻一刻と変動します。
- 日米それぞれの景気動向、景気を示す指標の発表
- 総理大臣や大統領の交代など政治的要因
- 中央銀行の介入
- 地域紛争や戦争
- 貿易収支や株価変動
しかも、それぞれの要因での変動幅も様々であるため、為替相場変動の正確な予想はできません。
2012年~2022年は徐々に円安ドル高に推移
2008年にアメリカで起きたリーマンショックによる金融不安の影響で、2012年末まで1ドル=約80円前後で推移していました。
2012年末に発足した第2次安倍内閣が大規模な金融緩和に踏み切ったことで一転し、その後10年余りは上下しながらも円安ドル高の流れとなっています。
その中でも2022年は、一気に円安ドル高が進んだ年です。
アメリカの中央銀行である米国連邦準備制度理事会(以下FRB)が、物価上昇を抑制するため、1年間で7回も利上げを行いました。
そのため、利上げを行わなかった日本との金利差拡大による円売りドル買いで、2022年10月には1ドル=約150円となるなど円安ドル高に拍車がかかりました。
2012年1月~2023年4月における米ドル対円為替相場
1月1日 | 4月1日 | 7月1日 | 10月1日 | |
---|---|---|---|---|
2012年 | 77.74 | 82.19 | 79.31 | 77.95 |
2013年 | 86.58 | 94.39 | 99.41 | 98.40 |
2014年 | 105.39 | 103.20 | 101.44 | 109.76 |
2015年 | 120.55 | 119.96 | 122.60 | 119.83 |
2016年 | 120.61 | 112.35 | 102.98 | 101.12 |
2017年 | 116.49 | 112.19 | 112.00 | 112.73 |
2018年 | 113.00 | 106.24 | 110.54 | 113.92 |
2019年 | 111.00 | 111.10 | 108.25 | 108.19 |
2020年 | 109.56 | 107.59 | 108.12 | 105.55 |
2021年 | 103.50 | 110.84 | 111.08 | 111.43 |
2022年 | 115.02 | 122.20 | 135.99 | 144.81 |
2023年 | 132.70 | 133.53 |
2023年は、円安ドル高の動きも鈍くなっている中でシリコンバレーバンク破綻の影響から、1ドル=約133円で推移しています。
10年間の為替相場からみた為替リスクの大きさ
2012年~2022年の10年間における円とドルの為替相場は、上がり下がりを繰り返しながら、1ドル=約78円から1ドル=約150円の間を推移しました。
つまり、仮に1ドル=130円の時に100万円で米国債7,692ドルを購入した場合、2012年~2022年の10年間の為替相場で満期や売却時に受け取れる日本円の範囲は以下のとおりです。
満期や売却時の為替相場 | 購入時1ドル=130円との比較 | 受け取れる日本円 | 購入額100万円に対する損益 |
---|---|---|---|
1ドル=78円 | 円高ドル安 | 7,692ドル×78円=599,976円 | 400,024円の損失 |
1ドル=150円 | 円安ドル高 | 7,692ドル×150円=1,153,800円 | 153,800円の利益 |
上記のとおり、2012年~2022年の10年間で一番円高ドル安の時と一番円安ドル高の時では、満期や売却時に受け取れる日本円で約55万円の差があります。
そして、保有期間中の受取利息を考慮すると、その差額はさらに大きくなります。
従って、米国債を購入する人は満期や売却時の為替相場が購入時よりも円安ドル高で推移が理想的ですが、為替相場の正確な予測は不可能です。
為替リスクを考慮した利回り計算例
米国債の利回り計算をする際には、為替相場を考慮しなければなりません。
例えば、以下の条件での利回りは、年3.66%となります。
- 購入額96ドル、購入時為替相場1ドル=130円、日本円購入額12,480円
- 券面額100ドル、満期時為替相場1ドル=131円、日本円受取額13,100円
- 満期まで3年9カ月
- 利率は年2.25%、利息受取時為替相場1ドル=130円、日本円受取額292.5円
{292.5+(13,100-12,480)÷3.75}÷12,480×100≒3.66%
上記を踏まえて、米国債購入によって収益も損失も発生しない為替相場Aは、利回りを年間0%として以下の計算式で求められます。
{292.5+(100×A-12,480)÷3.75}÷12,480×100=0
A=113.83
従って、満期時に損益分岐点となる為替相場は、1ドル=113.83円となります。
為替リスクはドル保有で大幅に軽減できる
米国債に投資する上で、為替リスクを完全に無くせませんが、ドル保有で大幅に軽減できます。
つまり事前にドルを購入しておき、米国債の購入から利息や満期、売却時の受け取りなど全てをドルで取り引きします。
そもそも為替リスクは、ドルから日本円に、もしくは日本円からドルに通貨を換えるため発生します。
従って、米国債における全ての取引をドルで決済すると、為替リスクは全く発生しません。
最近では、銀行や証券会社で外貨建の口座を開設できます。
円高ドル安のタイミングでドルを購入しておき、米国債はドルで取り引きしましょう。
そして、円安ドル高のタイミングで外貨建の口座から日本円に換えましょう。
価格変動リスクは様々や要因で発生
米国債は満期までの保有で、保有期間に発生する利息と券面額を受け取れますが、満期前に売却もできます。
しかし売却額は常に変動しており、売却するまで損益が確定しないことを価格変動リスクといいます。
そして価格変動リスクとは、米国債の価格変動による損失のことではなく、価格変動そのものを指します。
従って、価格変動リスクによって損失だけでなく、利益がでる可能性もあります。
米国債の価格は需要と供給のバランスで変動
米国債の価格は、一般的な物品で価格が決まる仕組みと同様に、供給側の売りたい人と需要側の買いたい人とのバランスによって決定します。
売りたい人と買いたい人のバランス | 需要と供給のバランス | 米国債の価格 |
---|---|---|
売りたい人>買いたい人 | 供給>需要 | 下がる |
売りたい人<買いたい人 | 供給<需要 | 上がる |
そして、需要と供給のバランスは、アメリカにおける以下の要因などによって変動します。
- 市場金利の変動
- 株価の推移
- その他社会情勢の変化
市場金利の変動や株式市場の状況は、主にアメリカの景気によって変動します。
その他社会情勢の変化としては、大統領の交代や国際紛争への参戦、大規模な自然災害などが挙げられます。
米国債券価格とアメリカの景気、市場金利及び株式市場の関係
アメリカの景気動向 | 市場金利 | 株価 | 米国債の価格 |
---|---|---|---|
良い | 上がる | 上がる | 下がる |
悪い | 下がる | 下がる | 上がる |
アメリカの景気が良くなると、市場金利や株価が一斉に上がるのではなく、一般的に以下の流れで変動します。
- 景気が良くなると企業も利益が出るため、米国債を売却して株式市場に投資する人が増える。従って、米国債の価格は下がる
- さらに景気が良くなると、物価上昇抑制のため、市場金利が上がる
- 市場金利が上がっても既発債の金利は低いままであるため、買い手が見つからない。従って、米国債の価格は下がる
尚、市場金利が上がると企業の借入コストも増加するため、株価は下がります。
一方で、景気が悪い場合の流れは、以下のとおりです。
- 景気が悪くなると企業の業績も悪化するため、株式を売却して米国債を購入する人が増える。従って、米国債の価格は上がる
- さらに景気が悪くなると、金融緩和のため、市場金利が下がる
- 市場金利が下がっても既発債の金利は高いままであるため、購入する人が増える。従って、米国債の価格は上がる
尚、市場金利が下がると企業の借入コストが減少するため、株価は上がります。
2022年の利上げによって既発債の価格は低下
急激な物価上昇を抑制するため、FRBは2022年の1年間にフェデラル・ファンド金利(以下FF金利)を7回も利上げしました。
FF金利とは、アメリカの銀行間で1日間だけお金を貸し借りする際に発生する金利のことであり、日本における無担保コール翌日物に相当します。
FF金利は、FRBで様々な経済データや指標をもとに設定するため、政策金利としての意味合いがあります。
2022年におけるFF金利引き上げの時期と引き上げ幅
金利引き上げの時期 | 引き上げ幅 | FF金利 |
---|---|---|
3月 | 年0.25% | 年0.25~0.5% |
5月 | 年0.5% | 年0.75~1.0% |
6月 | 年0.75% | 年1.5~1.75% |
7月 | 年0.75% | 年2.25~2.5% |
9月 | 年0.75% | 年3.0~3.25% |
11月 | 年0.75% | 年3.75~4.0% |
12月 | 年0.5% | 年4.25~4.5% |
2022年の1年間で年4.0%も金利は上昇しており、2022年以前に発行された米国債よりも金利が高い新発債に人気が集中したため、既発債の価格は低下しました。
2023年も引き続き既発債の価格は低下しており、その結果、利回りは高くなっています。
満期保有であれば価格変動リスクは抑えられる
価格変動リスクとは、米国債の価格が常に変動することであり、その変動は予測できません。
従って、米国債を満期前に売却する場合には、価格変動リスクの影響が大きく受けます。
一方で米国債を満期まで保有すると、券面額を受け取れるため、価格変動リスクは抑えられます。
米国債を購入する際は、価格変動リスクを抑えるためにも満期保有を大前提に、取り引きを行いましょう。
そして既発債を購入する際は市場価格で取り引きするため、利率で判断せずに、満期まで保有する場合の利回りを計算した上で購入を検討しましょう。
米国債の信用リスクは低いもののゼロではない
信用リスクとは利息や債券に記載されている金額が契約通りに支払われないリスクのことであり、会社で例えると借金が返済できず、破綻や破綻に近い状態であるということです。
従って、せっかく購入した米国債の利息や債券に記載されている金額が契約通りに支払われない事態は、絶対に避けなければなりません。
米国債の発行元はアメリカの財務省であるため、信用リスクは高くはないものの、ゼロではありません。
利息や債券に記載されている金額が支払われない事態を避けるためにも、購入前に信用リスクの程度を確認しましょう。
信用リスクの程度を測るには格付けがおすすめ
一般的に銀行が会社に融資する際は、提出してもらった2~3期分の決算書をもとに契約通り返済されるか審査を行います。
米国債はアメリカ財務省が発行する借り入れであるため、会社のような決算書はありません。
従って、米国債の信用リスクの程度は、借金など債務履行能力を表す信用格付けで確認しましょう。
信用格付けとは、信用格付け機関が独自に業績や経営状態などを調査、分析した上で公表している対象の支払能力を指標化したものです。
企業だけでなく国債を発行している国も調査対象としており、財政状態だけではなく、社会情勢や政治や経済の安定度なども考慮されます。
代表的な信用格付け機関は、以下のとおりです。
- Standard&Poor’s(以下S&P)
- Moody’s
- FitchRatings
いずれの信用格付け機関も、対象先の債務履行能力の程度をアルファベットで表しています。
S&Pの信用格付け一覧
信用格付け表記 | 概要 |
---|---|
AAA | 当該金融債務を履行する債務者能力は極めて高い。S&Pの最上位の個別債務格付け。 |
AA | 当該金融債務を履行する債務者の能力は非常に高く、最上位の格付けAAAとの差は小さい。 |
A | 当該金融債務を履行する債務者の能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい。 |
BBB | 当該金融債務履行のための財務内容は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって当該債務を履行する能力が低下する可能性がより高い。 |
BB | 他の投機的格付に比べて当該債務が不履行になる蓋然性は低いが、債務者は高い不確実性や、事業環境、金融情勢、または経済状況の悪化に対する脆弱性を有しており、状況によっては、当該金融債務を履行する能力が不十分となる可能性がある。 |
B | 債務者は現時点では当該金融債務を履行する能力を有しているが、当該債務が不履行になる蓋然性はBBに格付けされた債務よりも高い。事業環境、金融情勢、または経済状況が悪化した場合には、当該債務を履行する能力や意思が損なわれやすい。 |
CCC | 当該債務が不履行になる蓋然性は現時点で高く、債務履行は、良好な事業環境、金融情勢、および経済状況に依存している。事業環境、金融情勢、または経済状況が悪化した場合に、債務者が当該債務を履行する能力を失う可能性が高い。 |
CC | 当該債務が不履行になる蓋然性は現時点で非常に高い。不履行はまだ発生していないものの、不履行となるまでの期間にかかわりなく、S&Pが不履行は事実上確実と予想する場合にCCの格付けが用いられる。 |
C | 当該債務は、不履行になる蓋然性が現時点で非常に高いうえに、。より高い格付けの債務に比べて優先順位が低い、または最終的な回収見通しが低いと予想される。 |
D | 当該債務の支払いが行われていないかS&Pが想定した約束に違反があることを示す。ハイブリッド資本証券以外の債務については、その支払いが期日通り行われない場合、猶予期間の定めがなければその5営業日以内に、猶予期間の定めがあれば猶予期間内か支払期日の後30暦日以内のいずれか早いほうに支払いが行われるとS&Pが判断する場合を除いてDが用いられる。また、倒産申請あるいはそれに類似した手続きが取られ、例えば自動的停止によって債務不履行が事実上確実である場合にも用いられる。経営難に伴う債務再編が実施された場合も、当該債務の格付けはDに引き下げられる。 |
AAからCCCまで信用格付けには、相対的な強さを示すプラス記号とマイナス記号が付く場合があります。
一方で、上記信用格付けでBB以下は投機的要素が強いとされ、投資不適格債と呼ばれています。
信用格付けが下位になるほど信用リスクは高くなるため、その分金利は高くなる傾向にあります。
米国債の信用格付けからも信用リスクは低い
米国債の信用格付けは最上位または上位となっており、信用リスクは低いと判断できます。
各信用格付け機関における世界各国の国債の信用格付け及び10年国債の利回りは、以下のとおりです。
世界各国の国債の信用格付け利回り
国名 | S&P | Moody’s | FitchRatings | 利回り |
---|---|---|---|---|
アメリカ | AA+ | Aaa | AAA | 年3.435% |
日本 | A+ | A1 | A | 年0.457% |
ドイツ | AAA | Aaa | AAA | 年2.386% |
イギリス | AA | Aa3 | AA- | 年3.744% |
イタリア | BBB | Baa3 | BBB | 年4.269% |
ギリシャ | BB+ | Ba3 | BB+ | 年4.228% |
ハンガリー | BBB- | Baa2 | BBB | 年8.020% |
各国の政策金利や経済状況などによって既発債の価格は違いますが、一般的に信用格付けが高いほど利回りが低く、信用格付けが低いほど利回りは高い傾向にあります。
つまり、信用格付けと信用リスク、利回りの相関関係は以下のとおりです。
信用格付け | 信用リスク | 利回り |
---|---|---|
高い | 低い | 低い |
低い | 高い | 高い |
その中で米国債は、ドイツ国債並みに高い信用格付けながらも、年1%以上も高い利回りとなっています。
従って米国債は、信用リスクは低いものの、相対的に高利回りな金融商品といえます。
大規模な市場がある米国債でも流動性リスクはある
流動性リスクとは、何らかの要因で市場で取り引きの成立が難しいため、著しく低い価格での取り引きによって発生する損失のことです。
主な要因としては、人気が低い金融商品であるため市場規模が小さい場合、何らかの事情で市場が異常事態となっている場合が挙げられます。
米国債は、世界的にも魅力の高い金融商品であるため、売買されている市場は非常に大きなものとなっています。
従って、流動性リスクはかなり低いものの、全く流動性リスクがないわけではありません。
2023年3月10日に起きたアメリカのシリコンバレーバンク破綻により、アメリカにおける金融不安が一気に広がりました。
シリコンバレーバンク破綻前後の為替相場は、以下のとおりです。
日付 | 為替相場 |
---|---|
3月9日 | 137.10 |
3月10~12日 | 136.01 |
3月13日 | 134.34 |
3月14日 | 133.21 |
上記のとおり月曜日である3月13日には、1日で1ドル当たり1円67銭ものドル安円高に進みました。
一方で、米国債10年物の利回りも、3月10日を境に大幅に下がる事態となりました。
このように市場が異常事態となった場合は、流動性リスクが高まるため、米国債の取り引きにも影響がでます。
2023年4月現在、シリコンバレーバンク破綻による影響は沈静化しており、米国債の流動性リスクも低くなっています。
米国債保有において、流動性リスクは高くありませんが、大企業の破綻などの場合には一時的に高まる可能性があります。
従って米国債は、流動性リスクが低いタイミングで売却しましょう。
米国債はリスクはあるもリターンが臨める金融商品
米国債は、日本の国債よりも金利が高いため、多くのリターンを見込める金融商品です。
しかし、米国債の保有には、以下の4つのリスクがあります。
- 為替リスク
- 価格変動リスク
- 信用リスク
- 流動性リスク
特に為替リスクや価格変動リスクは高いため、対処しておく必要があります。
リスク | 対処法 |
---|---|
為替リスク | 事前にドル安円高時にドルを購入。米国債の取り引きはドルで行う。 |
価格変動リスク | 満期まで保有。 |
一方で、効率良い投資を行うために、事前に利回りを確認しましょう。
そして2022年以降、FRBのFF金利引き上げによって、為替相場や金融市場は不安定な状況が続いています。
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